第24章 怖い・・・
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真っ暗になった医務室
そこに入るための唯一の扉のほんのわずかな隙間。そこから聞こえてくる松川さんと及川さんの話し声
・・・聞いているのが辛かった
岩泉さんは・・・あたしのせいで・・・。松川さんも・・・あたしや、岩泉さんのために・・・
あたしは医務室の扉の脇にしゃがみ込んで思わず耳を塞いだ。
そして、また死んでしまいたいという気持ちが強くなった。
誰かに迷惑かけたくない・・・あたしのせいで誰かが傷つくのが嫌だ。
でも・・・それでも人を恨めない。
だって、及川さんだって目の前で大事な人を殺されたんだもん・・・。あたしを殺したいのも分かる・・・。
『もぅ…やだ…』
考えるのが嫌だ、誰かが傷つくのが嫌だ、誰かを恨むのも嫌だ・・・嫌なことだらけだ。
―――――夜琉っていい子だよね
―――――ホント夜琉ちゃんって悪い子だよね!!
どっちでもない。あたしはいい子でも、悪い子でもない・・・
―――――ただ何でも嫌がるわがままな子供だ・・・
「夜琉。」
医務室の扉が開いて松川さんが入ってきた。
うずくまっていたあたしは、入ってくるまで気づかずに思わず身体がはねた
「…帰り支度しろ。もうすぐ迎え来るから」
『・・・。』
「おい、早くしろ。及川が気づく前に」
松川さんが置いてあったあたしの服とカバンをあたしのもとへ投げ捨てた。それでもあたしは顔を上げられなかった
顔を上げて松川さんの顔を見たら、きっと泣いてしまうから
松川さんが殴られたのは、音で分かったからそれを見たらきっと耐えられなくなってしまうだろう
「おい…」
松川さんの声が医務室に響いた。
あたしは、ゆっくり立ち上がって極力松川さんの顔を見ないようにした。途中だった着替えも手早く済ませて医務室を出た
「…夜琉ちゃん」と、金田一さんに呼ばれてもあたしは返事をしなかった。
明るく煌びやかな青城の本社室は、凍ってしまいそうなくらいの冷たい空間に変わっていた
あたしは、松川さんのいう迎えを待つためソファに座った。足もソファに乗せて抱えるように足を固めて膝におでこを付けてその冷たい空間の時をやり過ごした