第19章 動き出す
奥に入ってくと覚えのある煙草の香りがしてきた
「…やっぱりテメエか。」
「久しぶりなのに冷てえな、賢二郎」
座敷部屋に座って酒を飲んでいた昔の戦友
相も変わらず何を考えているか分からないような食えない顔なのは変わらない
「…俺に用ってなんだよ」
俺は座敷に胡坐をかいて出された日本酒に口を付けながら睨む
「…お前の腕に傷つけた奴のことだ」
「あぁ、国見な。俺に気づかれてるようじゃまだ育てが甘かったかもな」
「お前こそ、国見ごときに腕くれてやることなかったんじゃねえか?」
「・・・。」
「…あの女がいたからか?」
「やっぱお前のとこにも噂は行ってるのか」
「…うちの社長様が前のパーティで会ってからずっと「あの子欲しいあの子欲しい」ってうるせえんだよ」
「あぁ、それうちもだな。若が彼女はいい女って言ってて白鳥沢のためでもあるが結婚するって言い張るし…」
互いに揃ってため息が出てしまった
そんな様子を見てお互い少し鼻で笑った
「お前、あの破天荒社長のせいで少し丸くなったんじゃねえか?」
「お前こそ、あのド天然総帥のせいで勘が鈍ってんじゃねえのか?」
と、2人で嫌味を言ってるがお互い昔より明るく話せていることは分かっていた