第16章 幸せな時間
「それでもあいつは、子供をつくったことはもう裏ルートで知っているから、いつかはここに来ると思う。だから、あたしはあの子を手放したの」
「・・・でも、本心じゃないですよね?」
「もちろんだよ、ホントならあんたたちと同じように自分の手で守ってあげたいよ。でも、あたし1人じゃあいつらからは守れないからね」
紫乃さんは、頭をかけながら話している
話す前に入れてくれたホットミルクもすっかり冷めていた
「…あのね、あんたたちにお願いがあるの」
「なんですか?」
「…もし、あたしに何かあっても誰も恨まないでね。」
「…。」
「恨むって何ですか…」
「…あたしは、ひょっとしたら白鳥沢に消されるかもしれないからね。」
ニコニコとした笑顔でそんなことを言う紫乃さん
その笑顔が、いつもの笑顔ではないことは俺たちみんな分かっていた
「…紫乃さんは死なないよ。俺達がいるもん」
「…トオルのくせに、生意気にいいこと言いやがる」
「…紫乃さん、俺達あなたにもらったこの命で紫乃さんのためにできることがしたいです」
「俺達、紫乃さんのこと守るから!!」
俺達は、紫乃さんに負けない笑顔でそう言い放った
紫乃さんはびっくりしてたけど、涙目でありがとう…と言ってくれた