第12章 黒猫の遊戯
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『お疲れ様で~す』
エレベーターから降りると、いつものごとくオーナーと及川さんと花巻さんがそこにいた
でも、今日はいつもとなにかが違った
「あぁ、お疲れ。今日は上がっていいぞ」
松川さんはそういうけど、花巻さんと一緒にソファに座る及川さんがなんだか機嫌が悪そうだった
『・・・?あっ、あの黒尾さんは帰っちゃったんですか?』
と、松川さんに聞いてみるとなぜか及川さんが血相を変えてあたしに迫ってきた
及川さんは、あたしをエレベーターのドアにたたきつけて問い詰める
「夜琉ちゃん…、黒尾君に何言われた?」
『えっ…いや、何も…』
「何も…?ホントに?」
『はい…何かあっ…ウっ!?』
突然及川さんはあたしの首を掴んできた
及川さんは、怒りの中に悲しさを浮かべた顔であたしを見下ろしながらギリギリと首を絞めていく
「…ねえ、言ったよね。俺のそばにいてって…。どこにも行かないでって言ったよね?…もう俺の元からいなくなる気?」
『ウッ…ぁ…ぉい…か…ハッ……ッ!!』
首を絞めてくる及川さんの手に触れると、及川さんの手は取っても冷たく硬かった
「よせよ、及川!!」
止めたのは花巻さんだった
あたしと及川さんの間に入ってあたしを抱き寄せる
及川さんの手が離れると、あたしはせき込みながら息を整える
「及川、なんなんだよさっきから!!黒尾の時といいおかしいぞ?」
「おかしくない!!マッキーには分かんないんだよ!!!」
そういって及川さんは、あたしを突き飛ばしてエレベーターに乗って地下に行ってしまった
あんなふうに怒鳴った及川さんを見たのは初めてだった
前家でみたのとは全然違う及川さんの様子を初めて見たあたしは、首を絞められた恐怖と驚きで体の震えが止まらなかった
黒尾さんが及川さんに何を言ったのか、なんで及川さんはあたしにあんなふうに言ったのか・・・
あたしには、何もわからなかった
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・・・もう時間がない
クロ君はきっと俺がやろうとしていることを分かっている
「…。」プルルルルル
〈…はい?〉
「もしもし、…明日お願い」
〈…いいんですか?〉
「いい…。明日…、」
・・・夜琉ちゃんを、殺して