第11章 白鷲の帝王と及川の秘密
『へっ…あっ』
いつの間にかあたしの背後に及川さんがいた
及川さんがあたしが見ていた写真に目を落とす
なんだか、悲しそうな目だった
『…あの、すみませ…』
「…ご飯できたよ。こっちおいで」
と、早々にあたしを部屋の外へ出した
『あっ、あの及川さん…さっきの写真の…』
「君には関係ないよ!!」
あたしの手を乱暴に掴んで離さない及川さんは、さらに強い口調で怒鳴った
今まで怒鳴ったことがなかったからあたしは異常に驚いてしまった
「…あっ、ごめん。」
『いえ…、あたしこそ…』
「・・・。」
顔を逸らして下を向いていたら及川さんがあたしを抱きしめてきた
今の及川さんはいつものスーツじゃなくて普段着だった。
抱きしめられて胸元に顔を埋めているとかすかに香ってくるタバコの香り。吸ってるイメージなかったのに・・・
「…夜琉ちゃん、俺の近くにいて。絶対に白鳥沢なんかに行かないで…」
『…あの、あたしはどうして白鳥沢に…?』
「…それは知らなくていい。君は俺のもとにいてくれればいいんだよ…」
あたしに何か言うたびに、あたしを抱きしめる力が強くなっていく
知らなくていい・・・
どうしてそうやって言われると、人って知りたくなるんだろう・・・
「・・・じゃあご飯にしよ☆ビーフシチューだけど、牛大丈夫?」
さっきとは打って変わっていつもの及川さんだった
キラッキラで胡散臭い笑顔であたしをダイニングへ誘っていく
及川さんのビーフシチューは、思った以上においしかった
それからあたしは、大きなお風呂に浸かって初めて経験したパーティの疲れを癒して、すぐに寝てしまった
*****
俺は夜琉ちゃんに余り過ぎている客室の1室を貸した
夜琉ちゃんは、よっぽど疲れたのかすぐに寝てしまった
「…可愛いね」
すやすやと寝息を立てている夜琉ちゃんの頬を撫でる
普段は気が強くてとっつきにくいけど、まだ幼い高校生なんだね・・・
・・・よく似ている
どうしてこんなに似ているんだろう・・・
顔も、性格も・・・
・・・似てなければ、すぐ終わったのに・・・
・・・どうしよう、できないよ・・・
紫乃さん・・・