第20章 テストの結果
「日代君がいい点取れたのは、私のノートのおかげじゃないと思うな。日代君が頑張ったからだと思う。日代君と出会ってからまだ日は浅いけど、私は日代君が頑張り屋さんなのは知ってるもん。」
暴走族にいた頃は仲間を守るのに一生懸命で、この前は私と一緒に勉強したときも、目の下にくまができるほど勉強していた。
きっとその頑張りがあるからこそいい成績がとれたし、仲間から憧れられるんじゃないかな。
「宮原には夢ってあるか。」
日代君は急にポツリと呟く。
「うーん、私は看護師になりたい。小さい頃、体が弱かったから、入院した頃があったの。点滴が嫌だったし、注射も怖い。何も治療したくないってだだこねたんだよね。だけど、そこの看護師さんに励まされて、頑張って治療も耐えて。だから今の私がいる。何か恩返ししたいのと、私も私のような人を元気づけたいって思ったの。」
「そうか…。」
「日代君は?」
私の問に、日代君は何かを迷っているような表情を見せた。
「俺は…。まだないな。族辞めてから俺は何すりゃいいかわかんなくてよ。とりあえず人より遅れてる勉強を少しでも追いつこうとしてんだけどよ。たまに考えるんだ。俺には何があるんだろうって。勉強もできねぇ、周りからは出来損ないのレッテルを貼られる。夢もまだねぇ。この先どう生きるべきなんだろうって。」
日代君にも悩みはあるんだな。
私には何でも持っている人に見えた。でも、日代君はそれに気づけてないんだ。
「守るべき人がいるよ。」
私の言葉に日代君は怪訝な顔をする。
「妹さんとか、友達とか。その人たちは、逆に守ってくれる人にもなる。それに日代君には人の気持ちがわかる優しい心があるよ。守るべき人の力になれるように生きていけばいいんじゃない?」
私の言葉に日代君は黙りこんで何も返さない。嫌なこと言っちゃったかな。少しヒヤヒヤしながら日代君の言葉を待っていると、日代君はフッと笑った
「たしかにそうだな。わりいな、辛気くさくなっちまって」
「全然構わないよ。」
でも心のどこかで、日代君がもっと私にいろんなこと話してくれればいいのに。などと考えている。
好きな人のことは全て知りたくなる。昔どこかで聞いた言葉が、今になってようやく理解できた気がする