第8章 誘拐
ほどなくしてメールの、着信音が鳴る
メールを開くと、そこにはニヤニヤ笑う向坂と、気を失い、後ろ手にロープで縛られた宮原の写真だった
宮原は本当に気を失っているのか、目を閉じている。
向坂の野郎、族に関係ねぇやつまで巻き込みやがって
久しぶりに頭に血がのぼる。
この感覚、懐かしい。仲間が手ぇ出された時もこんなふうにキレてたな
俺は少し笑ってしまう
「祐希、俺ちょっと向坂んとこに行ってくるわ」
「え、なら俺も…」
「お前は来んな」
「ちょ、お前正気か?たった一人で行く気かよ。向こうは大勢いるかもしれないだろう⁉」
「バカだな。俺を誰だと思っているんだてめえは」
祐希が黙りこむ
「それにな、お前の面が割れたらもしかするとお前の彼女まで迷惑かかるかも知れねぇぞ。やめとけ。族のやつでもないのに、危ねぇことに首突っ込むのは」
俺みたいになんぞ。と少し言いたかったが、自嘲しているようなので止める
族に入ったことは別に後悔したりはしない
ただ…。族以外のやつに手ぇ出すなんて卑怯だ。そんなの絶対許さねぇ。
待ってろよ向坂。
祐希が呼び止めるのも無視して俺は歩き出す
どうやら腕を掴んでいたようだが、勢いで振り払ってしまったようだ
悪い、祐希
俺は根っからの族だわ。喧嘩のことを考えると、宮原が人質になっているのも忘れて血がたぎりそうだ
でも、それは押さえねぇといけねぇ。
あの日俺はそう決めたのだし、冷静にならなければヘマを起こすかもしれない
絶対に向坂を後悔させてやる
学校の近くに停めていた自分のバイクに跨がる
宮原、悪いけど、もう少し待っててくれよな
俺はバイクのエンジンを吹かし始めた