第42章 ほんの些細な日常も
「ところで二人は結局どこまで進んだわけ?」
放課後、クラスメイトたちは既に教室を去っていて、ここにいるのはいつものメンバー、そう私と藍那と由梨花の3人だけだ。
「ど、どこまでって?」
藍那が尋ねてきた内容は薄々察したが、現実にならないことを望みながら私は聞き返す。
動揺しているのを悟られたくなくて、手元に持っていたパックに残っていたイチゴオレをストローで一気に吸い上げた。
「もちろん、日代君とどこまでしたか!」
意気揚々とそう言った藍那に少しため息をつきたくなる。
「手ぇ繋いだ。」
「フンフン、それから?」
「デートした。」
「それでそれで?」
「終わり!」
藍那はずっこける。
「えー!何よそれ!もっと続きそうな言い方だったのに!」
それは藍那の勝手な妄想と願望でしょ?とクスクス笑いながら由梨花が藍那にとどめを刺す。
「だってさー。あんなに仲いいのに全然初々しさが無くなんないじゃん。どうしてかなーって。」
藍那はずっこけたあとそのまま机に突っ伏していたので、ちらりと視線を上に上げて私を見てくる。
「それは確かにそうだね。週2くらいで学校に迎えに来てもらってるわりに、校門で二人が会ったときなーんかそわそわしてるもんね。」
「や、あれは何て言うか…。」
思わず何か言おうと思ったら、二人の好奇心に満ちた目とバッチリ合ってしまい、何と言えばいいのか少し迷う。
「なんか日代君と顔会わせたら何すればいいのかわかんなくなって困るから…。焦ってるだけで…。」
「それが初々しいの!」
私の返事に藍那はそう叫んだ。