第38章 誰のせいか
「いいねぇ、可愛い女の子なんて見るの久しぶりだわ。あたしの周りはヤローばっかりだからねぇ。あたしは林夏実。これでも一応看護師だ。と言っても来年なる予定ってのが正解なんだけど。」
にやっと笑う夏実さんはどことなく林さんと似ている。
「こんないかついやつが看護師とか世も末だな。」
「お前はちょっと黙れや。誰にケガの手当てしてもらってると思ってんの。」
夏実さんは林さんの頭を軽く小突く。
「痛いなぁ。暴力反対!」
「元族がよく言うわ。」
林さんと夏実さんはポンポン言葉を投げかけては返す、そうテニスとかのラリーに似ているかもしれない。
でもそのやりとりは何だかどことなく暖かくて。
私も弟とは無意識にこんな風にしているのかな、なんてぼんやりと考える。
「あ、姉さんがうるさいから忘れるところだった。早く家に行こう。」
林さんは日代君のバイクが置いてある方へと歩き出す。
「心春ちゃんは姉さんの後ろに二人乗りでもいい?一応雅、こんな状態だからあっちのバイクは俺が運転しようかと思って。」
「はい、ありがとうございます。」
手当てしてもらえる上にバイクで連れていって貰えるなんて、断らないはずがない。