第38章 誰のせいか
「帰るのが遅くなるから申し訳ないんだけど、心春ちゃんのケガの手当てをさせてくれないかな。」
林さんは私が落ち着いたのを見届けてそう言った。
「えっと…。」
日代君も診てもらった方がいいって言ってたし、そうさせてもらうかな。でも…。見てくれるのは男の人かな…。
「あ、心配しなくても手当てしてくれる人は生物学上女だから心配しなくて大丈夫。」
は、はぁ。少し不思議な言い回しをされていまいち理解できない。
どうやら電話を終えたらしい日代君が私の隣に立って、
「ちょっとがさつで勇ましいだけだ。いい人だよ、姉さんは。」
そう言ったとき、バイクのエンジン音が地響きのように唸りながら近づいてきた。
「実の弟としてはもう少しお転婆を止めて欲しいんだけどな。あれじゃあ永遠に嫁の貰い手がない。」
さっきの音の主が、台風のような風を引き連れて私たちの目の前で止まった。
「はっはーん。この子が雅の彼女か?」
そう言いながらヘルメットを外して顔を出した人は…。
女番長と呼ばれる人そのものの格好をしていた。
真っ赤に塗った爪と黒髪の所々に赤いメッシュを入れ、腰にはジャラジャラとチェーンをぶら下げている。
でもその快活そうな笑顔は、日代君や林さんのものとそっくりだった。
「彼女じゃなくて、友達です。初めまして、宮原心春って言います。」
これからお世話になる人だ。私はよろしくお願いしますという思いをこめてお辞儀した。