第38章 誰のせいか
「それは日代君自信が決めることであって、私が決めることではないわ。私は日代君に責任を押し付けたり遠慮させたりしたくないもの。」
確かに宮原を守ってくれと言われても絶対に守れるなんて保障はできないので、一も二もなく承知するなんてことはいけない。
「…わかりました。俺が最善だと思うものを選びます。」
宮原を守りたい。一番近くにいたい。そんな思いが前から何度も沸き上がっていた。
でも俺は何をするにも慎重になりがちで、何か新しく踏み出すにはかなりの勇気が必要になる。
その上一度相手が願ったことを拒否したくせに、自分からその関係になることを望むのはあまりにも自分勝手に思えた。
自分がこのような状態になってしまったのは自分が宮原をふったから、自分のせいだということはわかっているのだが、どうすれば想いを打ち明けられるだろうかと考えこんでしまう。
「日代君?」
ずいぶん長く黙りこんでいたからだろう、怪訝な声が聞こえてきてハッとなる。
そうだ、まだ通話中だ。
「は、はい。すみません、思わず考えこんでしまって。」
慌てて返事をすると、宮原のお母さんも安心したらしい。ホッと息を吐いているのがこちらにも伝わった。
「あの、心春は今から帰る?それとも日代君と少しお話しして帰るの?それだけは聞かせて。」
「今から知り合いの人にケガの手当てをしてもらうので、少し遅くなるんですけど、俺が絶対に送り届けます。」
俺はきっぱりと告げる。宮原のお母さんに恥ずかしくて顔向けできないようなことは絶対にしない。
せめて自分が今何をすればいいか迷っていても、宮原に礼儀正しく接しよう。