第32章 久しぶり
何をしに言ったんだろうとぼんやり考えながら、息を整えて、ハンカチで汗を拭う。
しばらくすると彼は片手にペットボトルを持って戻ってきた。
「はい、これ。お前、こんな炎天下の中走ってきて水分取らなかったらぜってぇ熱中症になるぞ」
「ありがとう。」
本当に彼の世話焼きにはかなわない。
私はありがたく水をもらうことにする。
ちょうど喉が渇いていたので、一気に半分以上は飲んでしまった。
「それにしてもよく逃げ切ったな。」
「一応中学の時、陸上部だったからね。スピードはあんまりないけど、持久力は他の人よりあるし、逃げ足は速いから」
意外だな。と日代君が返してきたが、それは運動部だったことだろうか。
「それにしても何で今ごろ宮原にあいつは関わってきたんだ。それも大勢で。」
日代君は眉をひそめて呟くが、私にも全く心当たりがない。
別に向坂にぶつかったわけでも無いし、挑発したわけでもない。
「とりあえず出掛けるときは誰かと一緒にいろよ。それならあいつらもちょっかい出しにくいからな。」
「うん。」
「あとは、走ってけがとかしてねぇか?サンダルだし結構きつかったんだろ。」
「大丈夫だよ。」
そんなやり取りをして、ああ、いつもの私達だ。と私は考えた。
やっぱり告白したあとはぎくしゃくするかな、なんて思っていたけれど、そんな必要もなかったようだ。