第29章 彼の過去と後悔
「じゃあもしかして日代君が夜遅くまで遊べないのは…」
話している途中であることに気がつく。
「そうだな。家のことできるやつ、俺しかいねぇから。親父は仕事だし、妹はまだ小せぇから家事は任せられねぇ。でも家事は苦痛じゃねぇよ。むしろ楽しいな。」
「今日は大丈夫なの?」
「日曜は親父がいるからある程度自由がきくんだ」
そうだったんだ。もしかして前にred crashの人たちに会ったとき、日代君のことで言いにくそうにしていたことがあったけど、この事だったのかな。
「こんな情けねぇ男で失望したか?」
自分で言ってるくせに、そんな寂しそうな顔をされると苦しい。
「全然。むしろ日代君が正直に話してくれて嬉しいよ。」
日代君はほっとしたようだった。
失望されたくなかったら言わなきゃいいのに。でも、それだけ誠実な人なんだろうな。
「っと…。そろそろみんなと合流するか。」
日代君が腕時計で時間を確認し、立ち上がる。
「うん。」
私達は並んで歩き出した。
ねぇ、日代君。私とは付き合えないって言ってたけど、私のことをどう思っているのかは全く口にしなかったよね。
それって期待してもいいってことかな。
私は隣を歩いている彼の顔を見上げる。
「…?どうした?」
「うんん!なんでもない!」
私は日代君に笑ってみせる。
「急ご!みんなを待たせちゃうかも。」
私は歩みを速めた。