第5章 救世主
「あ、ありがとう。」
私はハイヒールを受けとる。そしてもう一度履きなおそうとすると、さっき渡してくれたくせに、ハイヒールを取りあげられた
ムッとして見上げると、日代君は私の視線を受け止める。
「…足。」
「?」
「そんなひでぇ靴擦れしてんのに走れるかよ」
…。無理だね。足も血がにじんでいる
「ほら、ここ座れ」
日代君は歩道のわきにあるベンチを指差す。
返す言葉もないので私は座った
この足をどうにかしないと、病院にも行けない
バッグに絆創膏はあるだろうかと探ろうとしたら、大事なことを思い出した
バッグがない…
「あ、これか?お前が忘れてたから持ってきた」
何かを察した日代君は私のバッグを手渡す
「ありがとう」
さっきから情けない姿をさらし続けて、肩身が狭い
それに、いかつい男が女物のカバンを持って走るのは恥ずかしくなかっただろうか、と申し訳なさで一杯になった
その上にバッグを漁っても絆創膏は無かった
自分の女子力の無さを呪いたい…