第26章 夏祭り
「この混雑した行列にみんなを並ばせるの?」
藍那の指差す先には、ざっと見ただけでも10人以上は並んでいて、かき氷を買うまで長時間並ばなければならないことが目に見えた。
神崎君も一瞬ピクリと眉が動いていたので、人が多い!とでも思っていたのだろう。
「そ、れは…。悪いな。」
「じゃあそう言うことで。私ら二人で並ぶから、もしかすると帰る時間まで会えないかも。」
「確かに、この人混みだと連絡取り合ったとしても会うのに一苦労しそうだね」
藍那の言葉に由梨花が同意する。
だんだん、私達がそれぞれ二人きりになる用意が進んでいっている。
「じゃあ宮原は俺と回るか。」
そんなとき、思いもよらない声がした。
「え!」
まさか日代君本人から提案がくるとは思っていなかったので、心底驚いた。
由梨花が私の方を見て、やったね、と口パクで伝えてくる
「だって、祐希たちと一緒に回っても申し訳ねぇだろ?せっかくの祭りなんだしよ」
好きなやつと二人きりでまわりたいだろうしな
と日代君はどうやら由梨花たちに気をつかっての行動のようだ
でもそんなことで落ち込んでなどいられない。
「うん。そうだね。じゃあそうしよ。」
私と日代君は目的地へと向かう二組のカップルを見送った