第23章 憧れ
「日代君が黒髪でボタン上まで留めてる姿、ちょっと見てみたいな。」
私はエビフライを飲み込んだ後、そう日代君に向かって言った。
日代君がred crashに入った経緯を話してくれた後、私はお母さんが夕飯を作ると言ったので、手伝いに行った。
だからその後の話は聞いていない。
どうやらバイクや喧嘩の話で盛り上がっていたみたいだ。red crashを抜けた理由は日代君は語っていない。
「やめてくれよ、あの頃の俺はヒョロヒョロしててよ、今となっては黒歴史だな。誰にもあの頃の写真はぜってぇ見せたくねぇ。」
日代君は一気にまくしたてたあと、ご飯をかきこむ。
慌ててるみたいだな。なんか、慌てっぷりがかわいい。
日代君って滅多にそういう反応しないから、レアだね。
「俺も部活やってるのに、いつまでもヒョロヒョロで困ってるんですよね。筋肉の付け方ってコツありますか?」
明人の目線の先には日代君の腕がある。
明人はテニス部に入っているが、その割には日に焼けないし、筋肉もそこまでついてる訳じゃない。
反対に日代君の腕はものすごくたくましい。
スポーツ選手並みの筋肉のつき方で、ヒョロヒョロだった面影なんて全く感じられない。
「よく食って、よく動いて、よく寝る。後は俺は筋肉つけるの一時期はまりまくっててジムとかずっと行ってたからこうなったんだよな。ただ、ここまでいくと長そでのTシャツ着にくいから大変だぞ。」
日代君はまだ6月に入ったばかりなのに、もう半袖だ。朝夕は冷えるのに、寒くないのかな、なんて考えていたのだが、もしかするとそれが関係しているのかもしれない。