第23章 憧れ
「そうですね…。俺、中学のとき、だいぶ荒れてたんですよね。」
彼のめつきが、どこか遠い過去を見るような、何かの思い出を慈しむような、そんな目になる
まぁ、身なりは今でも充分不良と言えるものだけど、見た目とか、そういうもんじゃないんだろうな。
「その頃はまだ、髪も黒かったし、制服のボタンはきちんと上まで留める、そんなやつだったんですよね。」
日代君の黒髪…。何だか想像がつかないなぁ。それにボタンはきちんと上まで留めるって…。
ちょっと昔の頃の日代君を見たくなった
「ただ、自分がうまく主張できないことに無性にイライラして、でも何かできるわけでもなくて。すげえあの頃は苦しかったですね。」
確かに、私もそう感じたことは何度かある。言いたいこと言えなくて溜め込んでいると、疲れてくるよね。
「そんときに、俺の前にいた、リーダーの林さんに会ったんです。」
red crashの子も言ってたな。たしか、日代君は前のリーダーに憧れて入ったって。
「俺、集団でボコられているやつかを林さんが助け出すところにちょうど出くわしたんっすよ。やたら派手なバイク乗り回して、拳だけで闘って、すげえ広い背中だって感じて。この人みたいになりてぇって決めたんです。」
そう語る日代君は本当に楽しそうで、その人が日代君にとってどれほど大事な人なのかがひしひしと伝わってくる。
「それでred crashに?」
「はい。林さんは最初は俺が入りたがっても、ここに入ったら偏見や悪評がついて回るぞって、取り合ってくれなかったんすけど、俺が何回も頼みに行ったらとうとう折れてって感じで無理矢理なんですけどね。」
日代君にはそれほど大きな出会いだったんだよね。
今の日代君がいるのは、その人のおかげでもあるんだろうな。