君を俺だけのものにしたい【Mr.FULLSWING】
第10章 子津の場合
「ねーづっ!」
××さんに袖を引かれる。
横を向くと××さんの顔が20センチの距離まで近付いていた。
「えっ!?あ、はい!?」
驚きのあまり声が上ずる。
××さんの顔は一瞬僕の目の前から消えて僕の耳元に移動した。
「・・・美味しいかどうか味見してみる?」
普段聞いた事の無いような声のトーンでささやかれて、僕の背筋がぞくっとした。
「あの!?××さん!?」
「あれ?嫌?味見したくない?」
きょとんと小首をかしげる××さんは、まさに小悪魔という言葉がぴったりだった。
「嫌も何も味見どころか完食したいっすけど!って、ああああああ僕はまたなんて事を!」
パニックに陥り頭を抱えて自己嫌悪する僕。
××さんは漫才でも見るかのように、僕を指差し声を上げて笑っていた。
「××さんが変な事言うからっすよ!」
「一番最初に変な事言ったのは子津だよー。」
「そうっすけど!その・・・耳元でささやいたりするから・・・。」
なんで僕が恥ずかしがってるんすかね?もう男としての威厳とか、そういうのめちゃくちゃっす。
××さんはずーっとおかしそうに笑っていた。
「で、キスするの?しないの?」
「え?あー・・・。」
頭が真っ白で返答にまごつく僕に、××さんが照れながらとどめの一撃。
「・・・あたしから誘うの恥ずかしいんだよ?」
この一言で、もう僕がムッツリ妄想だけでキスを終わらせる理由は、どこを探しても無くなっていた。