君を俺だけのものにしたい【Mr.FULLSWING】
第10章 子津の場合
「あの橋の下でいっつも壁あてしてるっす。」
土手を降りて河川敷を歩き、橋の下に自転車を停める。
「なんか秘密基地みたい。」
橋の下は人目を避けているように暗がりで、確かに秘密基地には向いていそうだった。
「そういえば小さい頃、友達3人とここに段ボールハウスを作ったっす。」
「いいねー。男の子っぽい。」
××さんは僕が作ったマウンドから投球ポーズをとって見せる。
あれが××さんが見せられる精一杯の男っぽさなんすかね?
でもスカートでそんなことしたら中が見えるっすよ?
なんて注意しない僕はやっぱりムッツリだと再確認する。
「壁にいっぱいボールの跡がある。」
「小学4年生からやってるっすから、かれこれ7年目っすかね。」
「毎日!?」
「体調不良にならない限りは毎日っすよ。」
××さんは感嘆の声をあげながら壁に歩み寄った。
「子津の努力はよく見てたつもりだったけど、まだまだ知らない努力がいっぱいあるんだなー。」
ボールの跡を手でなぞる××さんに、僕は何故だかすごく照れた。
「好きなことに関しては努力も努力と思わないっすよ。」
「そんなところがかっこいいし好き。」
そう言って僕を見る××さんの笑顔にドキッとする。
××さんに見つめられて自分の中から沸き上がるものを感じた。