第7章 四日目
トランクスは元気そうだった。
……少なくとも見た目は。
だからユメも、何もなかったように彼に接した。
……昨夜のあれで、彼の心の傷が癒えたとは思わない。
でも、少しでもその助けになれたなら……ユメはそう思っていた。
今ふたりはテレビを見ながら10時のティータイムを楽しんでいた。
ブルマは朝食の後すぐに研究室に入ってしまった。
「いいのかなぁ……」
「ん? 何が?」
ユメの呟きにトランクスはテレビから視線を外した。
「私、本当に何もしなくていいのかなぁ……って思って」
カチャ、と紅茶の入ったティーカップに触れながらユメは言う。
今日は特にどこかに行くこともない。一日この家で過ごすことになりそうだ。
先ほど、もう一度ブルマに何か手伝うことはないかと尋ねたが、やはり答えは一緒で。
トランクスもそれを聞いていたのでユメの言いたいことはわかっていた。
「手持ち無沙汰?」
小さく笑いながらトランクスが言う。
「……うん」
「うちはほとんどの家事はロボットにまかせっきりだからなぁ。料理は母さんが好きでやってるけど。だから朝みたいにそれをちょっと手伝ってくれるくらいで、本当に大丈夫だよ」
それでも何か悪い気がして、ユメは訊く。
「トランクスは?」
「え?」
「私に何かして欲しいことない?」
突然の申し出にトランクスは少し驚いたようだ。
「……ユメに?」
「うん」
するとトランクスは目線を天井に向け「んー」と唸った。
それを見つめるユメ。だが。
「今は特に無いかなぁ」
「そっかぁ……」
はぁと小さく息を吐くユメ。そのままティーカップに口を付ける。
それを見たトランクスが微笑んで続けた。
「強いて言うなら、……ユメに、ずっとここに居て欲しい、かな」
……?
紅茶に映る自分が瞬きをする。
え……?
今、……何て……?
あまりにもサラリと言われたせいで、耳では聞き取れていても頭が付いていかない。
カップを置いて顏を上げると、先ほどと変わらない笑顔のトランクスの視線とぶつかる。
一気に、身体の熱が上がった。