好きになったっていいじゃない【アイナナ】R18*完結*
第11章 折れたボールペン
さっき……キスしようとしてた……?
ううん、キスしたいって私が思った?
あの時、里絵がボールペンを折らなければ、声をかけてこなければ___
確実にキスしていたかも知れない。
5センチも離れていない距離に天の顔があった。
潤んだ瞳の奥は熱っぽくて、唇が私を誘っているように動いていた。
“キスしてもいい?”
「うわぁぁぁあああ……」
頭を抱えて動けなくなってしまう。
恥ずかしい!
いま思い出すとめちゃくちゃ恥ずかしいっ……!
私ったらなんていう事を!
仕事中に仕事を忘れるなんて大失態
(撮影中じゃなくてよかった)
「廊下まで声が響いていたよ」
「里絵……っ!」
「あんたねー」
「ごめん……」
「……まあ……しょうがないよね」
苦笑いを浮かべている里絵からは本気で怒っているようには見えないんだけど
(てっきりめちゃくちゃ怒られるのかと思って身構えていた)
「里絵……?」
「どうやら天は本気みたいだし」
「え?……天が?本気?」
「ねぇ、天と……何かあったよね?」
「う……!」
「何かあったの?」じゃなくて「あったよね?」って言ってくるっていう事は何かを確信しているっていう事だよな?
バレてる?
天におでこにキスされたの……バレてるのか?!