好きになったっていいじゃない【アイナナ】R18*完結*
第9章 唇で煽ってよ
モヤモヤとした気持ちで次の現場、つまりPV撮影の現場に到着した。
おでこにチュウをされてから天とは会ってないし、ラビチャでのやり取りも当然、ない。
どんな顔をして会えばいいのかな?
(仕事なんだから仕事用の顔しなきゃダメだよな)
「」
「ん?なんだよ」
ちょっと怒っているのか?
眉間にしわを寄せている里絵が、私をいきなり抱きしめてきた。
「里絵……?」
「今はPVだけに集中して」
「え……?」
「この仕事が終わるまでは天を……TRIGGERの九条天として見て」
「里絵……それって……」
「この仕事だけは絶対に失敗出来ないから。はアイドルだよ。アイドルの恋人はファン……わかっているよね?」
そんな事、わかっているよ。
でも!
それでも好きなんだよ。
天の事が……どうしようもないくらいに。
最初は本当に憧れだった。
TRIGGERの九条天に憧れて、実際に会ってみたくてアイドルを目指した私
(もちろん、お母さんの夢を叶えたいっていうのもある)
でも、デビューして実際に仕事をしてみたら大変な事も沢山あるけど
「頑張って!」
「応援してるよ!」
「元気もらったよ!」
そんな声が聞こえてくると嬉しい。
仕事はきっちりとやりたい、ううん。
やるつもり。
天との事は……今はしっかりと蓋をして鍵をかけて、鎖で縛り付けておこう。
(好きだから、ダメな子って失望されたくない)