第3章 Trick or Treat(降谷零)
「降谷さん!Trick or Treat!」
「……は?」
深夜の警視庁。
仕事も大体方がついたので帰り支度を済ませて、椅子に座ったまま勢いよく腕を上に伸ばしていた俺にいきなり後輩が手を差し出してきた。
部屋に置かれている時計にちらりと目線を移すと、10月31日0:00と書かれていた。
そうか今日ハロウィンか…俺には関係ないけど。
「今 そうか今日ハロウィンか……俺には関係ないけど って思いました?」
「エスパーかよ」
「好きな人の考えてる事なら分かります」
「ハイハイ」
こいつはいつも真顔でこういう事を言ってくる。
上司の俺をからかっているとかではなさそうで、純粋な瞳で言ってくるから余計にタチが悪い……
最初の出会いも衝撃だった。
そう、出会いは今年の春ー
「本日より警視庁、公安部に配属されました。と申します。宜しくお願いします。」
「俺は降谷零。君の上司になるな、宜しく。」
女性であり、新卒の為若く、容姿も可愛らしいに公安部ではすぐに噂になっていた。
確かに顔は可愛らしい。だが、仕事先で浮ついた気持ちになる事もなくサラッと自己紹介を終えるつもりだった。
コイツがいきなりこんな事を言わなければ。
「降谷さん、好きです。」
「え」
突然のの真顔での告白にはその場にいた全員が振り向いた。まあ、当たり前だよな。
その後流石にその場の空気を感じ取ったのか、は小さく「すみません」とお辞儀をしてその場を後にした。
アレはなんだったのか……
告白された事はすぐに噂になり、俺はの初恋の人という事で耳に入ってきた。
なんでも本人がそう言っていたらしい。
俺も噂を聞いた事を知ったのか、その後一緒に仕事をする際コイツは開き直ったかのように好きだの何だのサラッと伝えてくるようになった。
最初は動揺していた俺も周りも、最近ではそれが当たり前になってきていた。
慣れって怖いな。
それにしても、どこかで会ったことがある気がするんだよな……気のせいか?