第2章 リトルアンダースタン
「そっか〜、やっぱ真ちゃんはずけえんだよなあ〜…俺じゃあれは無理だもんな」
と、いつもとは違った雰囲気の声を出すから、つい、というか条件反射で高尾君を見ると、
いつもとは違う、笑っているけれど、どこか悲しげな高尾君の横顔があった。
「そんな…さい…」
「え?」
「そ、そんな事言わないでください!高尾君も凄いです!先輩ばかりのレギュラーの中で、負けないように一生懸命に練習している高尾君を見て、ちゃんと凄いって分かります!少なくともわたしは凄いと思ったし、尊敬しました!だから…だからそんな、悲しい事言わないでください!」
気がついたら声を荒げてしまっていた。
ぽかんとわたしを見ている高尾君と数秒見つめ合ってから、自分がなんて恥ずかしい事をしてしまったのか理解した。
その途端ぼわっと顔が熱くなって、自分でも顔が赤くなったのがよく分かった。
「ぅ、あ、え、と、す、すいません!忘れてください!今すぐ!」
その場にいられなくなったわたしは小走りに高尾君から離れた。
いきなりこんな事言われたら誰でも気持ち悪がるに決まってる!
とんでもない失態を晒してしまった…!ありえない!ありえないいいい!!!
もんもんと顔を真っ赤にして落ち込んでいると、ぽん、と頭に何かがのって、上から
「ありがと」
と聞こえた。
そして高尾君がわたしの前に出て、くるっと振り返ってから
「バイバイ、また明日」
と、暗闇でも分かるくらいの笑顔で手を降って
暗闇の中に消えて行った。
頭に高尾君の手が乗った事を理解するのに、時間はかかったけど、分かった。
その頭まで熱いのは、さっき声を荒げたことがまだ恥ずかしかったからだろうか。