Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第8章 ★忠犬リエーフ《灰羽 リエーフ》
帰り道に近所のスーパーで買い物を済ませ、アパートに向かう。築5年、まだ新しい2階建ての小洒落た外装。
カチャリとカギを差し込みドアを開けば、フワリと香はカモミール。私の、お気に入り。
「おじゃましまーす、わ、いい匂い…」
『これね、カモミールなの。デリケートだから育てるのが大変なんだよ』
ベランダにプランターで育てたカモミール。上手に咲くまで何年もかかった。
靴を脱いで、リビングを案内しながら話す。カチッと電気を点ければ、LEDが明るく照らす。カーテンを閉め、台所へ。
「へぇ。でもこれ、最近嗅いだこと…」
あっ!とリエーフが叫ぶ。振り返ると、ちょいちょいと手招きをされる。
『どうし…きゃっ!』
ぎゅっと後ろから抱きしめられる。そして、リエーフは私の髪に顔を埋めて呟いた。
「あー、やっぱり!」
『な、何が?』
「カモミール、海宙さんの髪から香ってた。だから嗅いだことあったんだ」
『カモミールの製油をコンディショナーに入れて使ってるからかも』
うなじの辺りで呼吸を繰り返すから、吐息がくすぐったい。身を捩ると、リエーフが妖しく笑う気配がした。
「感じてる?」
『まさか。くすぐったいのよ。ホラ、晩ご飯作らなきゃ。お肉、お預けになるわよ?』
それは困る!とリエーフは私から慌てて離れた。その動きが面白くて、また笑った。
それからホットプレートで、お肉を焼いた。勿論、野菜もたっぷり。ビタミンとらなくちゃね。
とっておこうと安売りを4人前は買ったハズなのに、いつの間にか全部無くなった。男子高校生(運動部)の食欲、恐るべし。