Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第33章 ★君と俺の8秒間《瀬見 英太》
【瀬見 side】
主審のホイッスルが鳴って、8秒間。
その8秒は、俺の時間だ。
ボールを上に投げて、走って、跳んで、
腕を振り上げて、そして、打つ。
磨き上げたそのジャンプサーブを、
君が好きだと言うのなら、俺は―――
爽やかで明るい笑顔と、栗色のショートボブが彼女のトレードマーク。蒼井はバレー部の貴重なマネージャーであり、俺の大切な彼女でもある。
同じクラスの蒼井とはいつも一緒に部活に行く。今日も着替えて全員揃ったらクソみたいに長いロードワークだ。
校門の前にぞろぞろと並ぶ。いつものように五色が若利に勝負を挑んでいるのが見えた。軽くストレッチをしていると、天童がニヤニヤしながら言った。
「おやぁ?英太クンはいつになく気合いが入っていますねぇ?」
「バカ、解しとかないとどっかの誰かみたくずっこけてケガするだろ」
「…工のことかな?」
「あいつ以外に誰がいるよ」
『えいたぁ、さとりぃ、お喋りそこまでね~!いつものコースでよぉい…ドン!』
ドン!と同時にギュンッと走るのは例によって五色。あんなに飛ばしたらいつかへばるぞ、と思いつつ自分のペースをキープ。ちなみに若利の背中は既に小さい。
「監督、厳しすぎんだろ…」
「ま、いつもどーりでしょ」
監督に悪態を吐いてみるも、ワープできるはずもなく、今の俺にできることといえばせいぜい全力で走ること。ぜえはぁ言いながら走り、ようやく学校に辿り着く。
『おつかれ。英太』
「サン、キュ…」
やべ、昼飯食い過ぎた、腹が痛い…荒い息をする俺の背中を蒼井は優しく撫でてくれた。それからドリンクを飲み、ふーっと息を吐くと落ち着いてきた。
『お腹痛い?だいじょぶ?』
「おう、もう平気だ」
『そ?よかったー!』
にぱっと白い歯を見せて笑う蒼井。マジで、俺の天使ですね、はい。
が、マネージャーなので俺だけに構うわけにもいかない。後輩たちにドリンクを渡す後ろ姿を、微笑しながら見詰める。と、またしても天童がニヤニヤ。
「英太クン、ヨソ見しちゃダメよ~ん♪」
「いっぺん失せろ」