Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第30章 カレカノ指南?《青根 高伸》
今度はさっきと違って、私が痛くないように優しくぎゅうっと抱きしめてくれる。こうしてると"好き"って気持ちが伝わるみたい。
しばらくそうやってお互いの温もりを感じていると、不意に高伸さんに呼ばれた。
「紫乃」
『はい?』
ひょこりと顔を上げると、いつになく真剣な顔をした高伸さんと目が合った。
「俺は不器用だ。無口で無表情で、二口にもよくもっと笑えと言われる」
『はい』
「だが、紫乃を想う気持ちなら誰にも負けるつもりはない。俺は紫乃が好きだ」
『~っはい!』
その言葉が嬉しくて、ぎゅうぅっと高伸さんに抱き付く。なんだ。私から言わなくても、高伸さんはちゃんと伝えてくれたじゃない。私のことが好きだよって、言ってくれたじゃない。
その時、コンコンッとドアがノックされた。私たちは慌てて離れると、ドアの向こうから声が聞こえた。
「おーい青根、紫乃ちゃんとイチャコラすんのもいいけどもうそろ部活来いよー!」
「すまん、二口。すぐに行く」
二口先輩の来訪に、部活中だったことを今更思い出した。い、イチャコラって…赤くなる私の頭を、高伸さんはぽんぽんと撫でた。
「今日は部活が遅くなるから、蒼井と先に帰っていてくれ」
『分かりました』
そう言って部室を出ようとした時、昨日のことを思い出した。私が頑張るって話をしたこと。さっきは高伸さんが伝えてくれた。今度は私の番だ。
『高伸さんっ!』
部室のドアに手を掛けている高伸さんを呼び止める。振り向いた彼のジャージを掴み、精いっぱい背伸びをした。
ちゅ。
触れ合う唇は思っていたよりも柔らかくて、温かかった。一瞬のキス、パッと離れて捨て台詞のように叫ぶ。
『ぶっ部活頑張ってください!』
「紫乃、まっ…」
呼び止めるのも気にせずに走る。どうしよう、自分からしたのにすごく恥ずかしいよ!
一進一退どころか、一歩進んで二歩くらい下がっていそう。真っ赤な顔を手で覆いながら、クスリと笑みが零れた。
それでも、少しずつ進んでいけたら、それで良いかなって。それが、私たちなんだから。
あぁでも、明日会う時どんな顔して会おう…
早くも不安の訪れ。でも大丈夫、と思う。どこから来るのか分からない自信を抱きつつ、とりあえずは走る私なのであった。
END.