第16章 presage
「岡本さん!」
甲高い声に私は振り向く。
同じ作品で共演している女のコ。
小柄で、髪がフワフワで。
目が大きくて…
最近人気の新人さん。
私は少し苦手なコ……。
「また連れてって下さいね。」
「楽しみにしています!」
話の内容が聞きたくなくても入ってくる…
もしかして…
ノブくんの好きなコって…
考えただけでゾッとする。
でも……
私の勘違いかもしれない。
そう…
勘違い……
「パンケーキって?」
視線を合わせずカノジョに問う。
「この前、岡本さんと表参道のパンケーキ屋さんに行ったんです!」
溢れんばかりの笑みで、私に答える。
私が教えたあのお店…じゃないよね?
きっと違う。
だって。ノブくんは甘いモノ好きだし。
きっと他のお店。
「沢山フルーツが乗ってて、美味しいのよね?」
「そうなんです!月島さんも行ったことあります?」
あはは。
やっぱり私が教えたお店。
「うん。よく行くよ~。」
「っと言うか、ノブくんにそのお店教えたの私だし。」
少し声のトーンが落ちたのが自分でも分かった。
大人げないな…
こんな対応しちゃうなんて。
言わなくても良いことまで言っちゃう。
「あー。岡本さんが言ってた『先輩』って月島さんだったんですね?」
『先輩』……
やっぱり私にとって、私はただの『先輩』。
「じゃあ、またお勧めのお店教えてくださいよ?」
「岡本さんと行くので。」
完璧に今、敵視されたよね(笑)
やっぱりノブくんには、こう言う可愛いコが似合うのかもしれない。
「じゃあ。私、先に行くから…」
もうこの場に居たくない。
私は逃げるようにその場を去った。