第3章 拠(裏)
水音とお互いの荒い息遣いが交わる。
「もっと……っ」
「あやめは欲張りだなぁ。」
「俺としては嬉しいけどね…っ。」
ガンガンと奥まで突かれて意識が飛びそう。
「あっ…もっと…もっと…ちょうだいっ」
「幾らでもあげるよ。」
耳元で囁かれる声…。
色気を纏うその声が、私の感度を一層高める。
「やっ…んっ!」
カラダが一気に硬直し、ガクガクと震える。
それと同時に私の中で、快楽を与え続けていたモノも欲を吐き出したようだ。
「んっ…くっ…っ…」
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
私達は抱き合い、言葉も交わさず息が整うのを待つ。
「はは…また一緒だな…」
「俺たちって相性、最高だと思うんだけど?」
顔を傾け、鼻の頭に触れるようなキスをする。
私は、視線を乱れたシーツに落としながら呟く。
「………本当に色気の無い発言。」
「あはは。色気やら雰囲気なんて関係無いだろ?」
「………。」
「何だよ。黙っちゃって。」
「何?俺のこと好きになっちゃった?」
「バカなこと言わないで……。」
「私達は、お互い好きな人がいるんですから。」
「需要と供給が合致してるから、こうなったんじゃ無いですか…」
「あはは。ムキになるなよ。冗談冗談。」
「お詫びに、次はもっと気持ち良くしてやるよ。」
「はいはい。では、次回に期待してますね。」
クルッと背を向け、ベッドから抜け出る。
「帰るの?」
「うん…」
「寂しくなっちゃうな。」
「何言ってるんですか…。」
「なぁ?何もしないから、今日は一緒に寝てよ。」
大の大人が眉を八の字にして、上目遣いとか卑怯だし…。
「もう…」
再度、ベッドに潜り込むと嬉しそう。
ギュッと抱きしめられて、額にキスを落とされる。
「そう言う事は、好きな人にしてくださいよ…」
「予行演習だよ。」
ニコッと笑って頭を撫でる。
「……勝手にしてください。」
私は、瞼を閉じて胸いっぱいに汗ばんだ空気を吸い込んだ。