第6章 abyss(裏)
ドクンドクン。
心地良い微睡みの中で、汗ばんだ胸に耳を付け視線は宙を彷徨う。
視界の端で、キレイな長い指が私の髪をくるくると巻きつけて遊んでいる。
その動きを目で追う。
「俺もさ…」
「片想い中なんだよ…。」
「しかも、相手には好きな人がいる。」
「もうベタ惚れでさ。」
「俺がこんな風に思ってるなんて、気付いてないんだよ。」
「そのコは、カレの事しか見えてないんだ。」
「本当に切ないよな……」
「………。俺は、あやめと同じだよ。」
「だから、あやめの気持ちがよく分かる。」
そう言うと、私の肩を抱き引き寄せる。
頬に手を触れ、そっと撫でる。
「『悠一』…これからは、そう呼んでくれるか?」
「似たもの同士。」
「仲良くしような…。」
そう言うと悠一さんは、私の額に口づけた。