第49章 life
公園のベンチに寄り添い座れば、陽だまりの中心地良い風が頬を撫でる。
隣でウトウトとうたた寝をするあやめちゃん。
より大きくなるお腹が、顔を見られる日へのカウントダウンの一つの方法になっている。
「男の子かな?」
「女の子かな?」
あやめちゃんのお腹を撫でて囁く。
「今ね。公園のベンチで、噴水を眺めてるんだ。」
「この公園はね。パパがママにプロポーズした所なんだよ。」
「あ。プロポーズって分かるかな…」
少し焦って、擦っていた手を止める。
「えっとね。結婚して下さいって言ったんだ。」
「あの時は、緊張しちゃって大変だったよ。」
「柄にもなく、赤いバラの花束も用意して。」
「キミのママは、モテモテで。」
「パパは、本当に大変だったんだよ。」
「でも、すごくすごく頑張った。」
「何事も諦めなければ叶うんだって、実感したんだ。」
「だからキミにも諦めずに頑張って欲しい。」
「出来る限りサポートはするからさ。」
「早く出て来てよ。」
「あ。でもパパにとって1番は、ママだから。」
「それだけは、覚えておいてね?」
話し終えると動いた気がした。
気のせいかもしれないけど。
「自由?さっきから何ブツブツ言ってるの?」
あやめちゃんが、擦っていた手に自分の手を乗せて話し掛けてくれた。
「えっとね。」
「この子と俺の秘密!」
お腹に顔を近付け、両手で口元に壁を作り囁く。
「二人だけの秘密だからね。」
ふと視線を上げれば、優しく微笑んでくれるあやめちゃんと目が合う。
「早く会いたいね。」
「ママが早く会いたいって言ってるよ。」
再度、お腹に向かって話しかける。
「もう。なんでも報告しないの!」
あはは。と笑って、俺達は微笑み合う。
この世界は、辛いことも沢山あるけど。
それ以上に愛しいものや楽しい事に溢れてる。
キミにも早く味わって欲しい。
煌めいているこの世界を見せてあげるよ。
だから…
焦らさないで早く会いにきてね。
END