第48章 Final
「うぅん。良いの。」
「自由にも守らなきゃならないモノが沢山あるもの。」
「同じ業界に居るんだもん。それくらい分かる。」
細い指で頭を撫でられ、優しく頬に触れてくれるあやめちゃん。
「大丈夫。大丈夫だからね。」
優しい心地良い声。
「あやめちゃん。ゴメン。」
「ライブ前なのに…」
「暗くしちゃって。」
励ます為に来たのに何言ってるんだろう。
情けなさに視線を床へ落とす。
すると、落ち着く香りが鼻腔を擽る。
「うぅん。」
「自由が私の事をちゃんと考えてくれてるのは知ってるから。」
そっと首に腕を回し、優しく抱き締めてくれた。
「自由?今日は来てくれて本当にありがとう。」
「会場で見てくれる?」
耳元で聞こえる声。
ギュッと抱き締め俺は答える。
「もちろん!」
キミの晴れ舞台だもん。
見るに決まってる。
その為にタクシーとばして貰ったんだから。
「ありがとう。自由が同じ会場に居てくれると思うと心強い。」
「指輪は付けられないけど…」
申し訳無さ気にリングピローに置いた結婚指輪を見つめる。
俺はあやめちゃんの手を取り耳元で呟く。
「大丈夫だよ。今日は俺が付けるから。」
いつも付けられない結婚指輪。
何て言われても構わない。
だって今日は、特別な日だから。
俺は、左手をあやめちゃんの目の前に差し出し光る指輪を見せる。
驚きながらも瞳を潤ませ、笑いかけてくれる。
これからもキミを笑顔にしてみせるよ。
俺はね。
本当に大好きなんだキミのことが。