第46章 andante
「はい。どうぞ。」
背中に隠した花束をあやめちゃんの胸元に差し出す。
「え?」
「プレゼント。」
「何で?誕生日じゃないよ?」
「あはは。知ってるよ。」
期待通りキョトンとする顔に嬉しくなる。
「受け取ってくれる?」
コクッと頷き、両手で受け取り胸元に引き寄せられる花束。
「ありがとう。」
呟くように小さな声。
肩をすくめて、ニカッと笑う表情に俺の口元も緩む。
さて。
ここからが本番だよ。
一世一代の大舞台。
どんな舞台より、どんな収録より緊張する。
でも。
決めたんだ。
今、伝えるって。
肺いっぱいに少し冷え始めた夜の空気を吸い込んだ。