第43章 key holder
あやめちゃんの近くに寄る前に一度後ろを振り返る。
うん。
もうあのコは居ないみたい。
小走りで駆け寄り、肩で息をする。
久々に走ったから息切れちゃったよ…
「ふぅ。お待たせあやめちゃん。」
「どしたの?」
「ちょっと気になった物があったんだけど。」
「買いに行ったら、ファンのコに見つかっちゃった。」
「変装は完璧だと思ったんだけど…」
帽子を目深に被り直し、眼鏡を掛け直す。
「あはは。バレちゃったんだね。」
「うん。もっと勉強しないと。」
フゥーッと息を吐き出し、視線を向ける。
「ね?」
「あやめちゃん。」
「ん?」
「一緒に帰ろうか。」
「うっ…うん。そのつもりだけど?」
「なら良かった。」
今すぐにでも、手を繋いでキミを連れ去りたい。
贈り物をするのに理由が要らない。
堂々と手を繋ぎたい。
そんな関係になりたいよ…。