第40章 piece
「良平さん…」
「何言ってるんですか…」
俺は握り締めた拳に力を込める。
「前に泣きながら話してくれたことがありました。」
口調が強くなる。
自分でも分かる。
あやめちゃんが苦しんできた数年。
良平さんは知らない。
「『忘れられない人がいる』って。」
「重荷にしかなれなくて。」
「でも本当に好きで。」
「その人と離れてからも、自分は立ち止まったまま。」
「前に進もうと思っても、進めない。」
「俺は…それも含めての今のあやめちゃんが好きって伝えました。」
「『ありがとう』とは言ってくれても、俺は貴方のように隣を歩くことは出来ないんです。」
「良平さんは今でもあやめちゃんが好きなんですよね?」
「今日のイベントでも話をした、『星座』の話だってあやめちゃんの為に覚えたんですよね?」
「あの話をした辺りからあやめちゃんの様子がおかしかったから…」
「あやめちゃんは、今でも良平さんが好きなんですよ。」
「ずっと見てきた俺が言うんですから間違いないです。」
「あやめちゃんと歩けるのは、良平さん…貴方です。」
言った途端に頬を何かが伝った。
「自由…」
俺の顔を見て、驚く良平さん。
もしかして…
俺…泣いてるの?
本当に情けないな……。