第33章 defend
タクシーを拾い、あやめちゃんを乗せる。
「一緒に帰りたいけど、もう一本収録があるから…」
「ごめんね。」
微かに漏れる嗚咽。
ぶんぶんと何度も首を横に振り、俺の謝罪に応える。
「仕事が終わったら、家に行くから…」
「それまで一人で待てる?」
目を真っ赤にさせながら、微かに微笑む。
そんなに気丈に振る舞わなくても良いんだけど。
「じゃあ、寝ないで待っててね?」
「あやめちゃんが寝ちゃったら、部屋に入れないから。」
ポンポンと頭を撫でて、運転手に行き先を告げる。
どんどん小さくなるタクシーを見つめながら俺は拳を握り締めた。