第4章 reading
「さぁ、着いたよ。あやめ起きて?」
「ん…」
髪を耳に掛けながら、耳元で囁く。
「起きないとキスするよ。」
急に振り向き、額をぶつける。
「痛ぇ…」
「痛っ!」
ぶつかった箇所を指先で擦り、クスクス笑う。
「中村さん!不意打ちは止めてくださいよ!」
「あー。本当に痛い…」
眉をひそめる姿も、可愛いと思っちゃうんだよな。
ははは………本当に重症だな。
ドアを開け、車外に出るあやめ。
「一緒に帰れて嬉しかったです。」
「では、これからもよろしくお願いしますね。」
手を振りながら、タクシーから一歩下がる。
俺は、さっきまであやめが座っていたシートに移動し窓を開ける。
「近いうちに飯でも食いに行こう。」
一瞬、驚いた表情を見せたもののすぐに笑顔を向けてくれる。
「はい!是非ご一緒させて下さい。」
「楽しみにしていますね。」
満面に笑みに自然と俺も笑顔になる。
「では、おやすみなさい。」
「あぁ。おやすみ。またな。」
窓を閉めると、タクシーは動き出す。
手を振るあやめに、軽く手を振り返しはにかむ顔が見えないように俺は下を向いた。
事務所の後輩だぞ。
さすがにマズイだろ…
どうしたんだろうな。
本当に俺らしくもない…