第4章 reading
あやめの手から滲む血液に血の気が引いた。
「早くしろ!冷やすもの!!!」
あやめの手を掴み、声を荒げる。
「中村さん!落ち着いて!!」
「大丈夫だから。」
周りのスタッフの声にふと我に返る。
強く握ったあやめの腕から手を離すと、くっきりと俺の指の後が見てとれる。
「悪い…こっちの方がヒドいよな…」
冷えたタオルであやめの手首と甲を冷やす。
「ごめん…。」
「いやー。中村さんの声よく通りますね!」
場の雰囲気がその一言で明るく変わる。
「あ。お疲れさまです。」
その場に現れたのは、演出家さん。
「舞台には、ハプニングは付きものですから(笑)」
「もし、本番で何かあったとしても…」
「そのハプニングも一緒に楽しんじゃいましょうよね?」