第21章 sigil(裏)
ガチャッと玄関の鍵を開ける。
キーホルダーに目がとまる。
「随分年季が入ってるね?」
「え…?」
「それ。」
手元にある鍵を指差す。
「あ…これ…」
「うん。ネコ?」
掌に収まる小さなキーホルダー。
伸びをするネコのシルエット。
シッポはクルンと先端だけ丸くなっている。
ピンクゴールドとブロンズが混じり合い、どちらが元の色か判別出来ない。
元々は、ピンクゴールド?
それともブロンズ?
「色変わってるよね?」
「うん。長い間付けてるから。」
「気に入ってるんだ?」
「………。うん。」
「ネコが好きなんて知らなかったよ。」
「今度、買ってあげるね?」
「自由?早く入って?」
開けたドアに、俺は押し込められる。
「そんなに急かさなくても入るよ~。」
クスクス笑って、俺は靴を脱ぐ。
「あやめちゃん。お帰りなさい。」
両手を広げて、あやめちゃんを迎え入れる。
「自由…ただいま。」
少し切ない顔で俺を見つめて、胸に顔を埋める。