第20章 threat
「最近連絡くれないから、会いに来ちゃった。」
「ね?今夜うち来ない?」
肩を抱いて、耳元で囁く。
息を吸い込むと、あやめちゃんの香りが鼻腔をくすぐる。
この香り…落ち着くなぁ。
「入野さんと月島さんって、そう言う関係なんですかぁ?」
幸せな時間を壊す声。
振り返ると最近人気が出始めた新人の女のコ。
この前まで、俺が好きだとほざいてた女(笑)
カノジョを見た瞬間、あやめちゃんの顔が青ざめる。
「盗み聞きするなんて、良い性格してるね。」
言葉を発しながら、あやめちゃんの前に立ち腕組みしながら嗜める。
わざと上目遣いで俺に問いかけてくる。
「え~?公共の場で、そんなことしてるのが悪いんじゃないですか。」
イライラするな。このコ。
「キミみたいに、薄っぺらいコ俺嫌いなのね?」
「馴れ馴れしく話し掛けないでくれるかな。」
睨んで見せても、全く効き目が無いようだ。
「入野さんヒドいです~。」
「月島さんは、そんなこと言わないですよねぇ?」
障害物となっている俺の体を避けて、あやめちゃんを覗き見て話しかける。
「キミしつこいね。」
「あやめちゃんに、話し掛けないでくれるかな?」
イライラし過ぎて、声のトーンが落ちる。
大人気ないけど、俺はあやめちゃんを守るんだよ。
「入野さん怖ーい。」
「これ以上怒られたくないし、もう退散しますね。」
「あ。そうそう。一つだけ言わせて下さい。」
「岡本さんに手出さないでくださいね?『先輩』?」
クスクス笑って去って行く。
何なんだ?
この変な余裕。
あの女…
数ヶ月前は俺のこと好きって言ってたくせに。
いやぁ…引っかからなくて良かった。
女のコって怖いねー。
あやめちゃんの顔を覗き込むものの、一向に視線が合わない。
顔も青白い。
「あやめちゃん?大丈夫?」
両肩に手を添えて、声を掛ける。
「とりあえず、出ようか?」
何も言わずにコクッと頷くあやめちゃんの横を一緒に歩く。
今日はナイトになれたかな?
あやめちゃん。
このまま俺のモノになっちゃえば良いのに。