第8章 新婚夫婦
「お兄ちゃん、お風呂上がったよ〜」
リビングでテレビを見ていると、伊織が来てそう言う。
わかった。と言いかけて、口を止める。
伊織の髪の先端からはポタポタと水が滴っていた。
「…、伊織さんよ。もう少しちゃんと拭かないと風邪引いちゃうよ?」
「いつもこのくらいだよー」
「ほらほら、脱衣所のドライヤー持っておいで?」
「えー?……はぁい」
渋々俺の言うとおりにドライヤーを持ってくる。
俺が自分の目の前をポンポンと叩き、"座って"と合図をすると、ドライヤーを俺に渡し、ストンと座り込んだ。
「はーい、いい子だねー」
「お願いしまーす」
「お任せ下さいお客様〜」
なんてやり取りをしながらドライヤーのスイッチを押す。
風が出てることなんてわかりきってるけど、ドライヤーの先に手をあてがってから、伊織の髪の毛に当てていく。
相変わらずサラサラだなぁ…。
風を当てながら手で梳くと、指の間から髪の毛が落ちていく。
まったくもう。
女の子なんだからちゃんとしなくちゃ。
可愛いからいいんだけど←