第1章 お兄ちゃんの朝
「お兄ちゃん!起きて!遅刻しちゃうよ!」
返事もしない俺の上に伊織は平然と乗ってくる。
こらこら、君制服着てるんじゃないの。
しわになっちゃうでしょ。
そんなことはお構いなしに、俺を体ごと揺すってくる。
「お兄ちゃーん」
さっきよりももっと、ねだるような声。
可愛くて仕方ない。
「んー?」とだけ、眠たそうに返事をしてみる。
「お兄ちゃん、遅刻しちゃうよー」
「伊織がもう一回『お兄ちゃん』って言ってくれたら起きるかも〜」
冗談半分、本気半分で言ってみた。
そしたら伊織、わかった!って…
はぁもう。かわいすぎるよ←
「お兄ちゃん」
「うん、もう一回」
「お兄ちゃん」
「うん、もう一回」
「お兄ちゃん」
「うん、もう一回」
「…」
お?黙った。
これはもしかして…
「…おい起きろ新ぁ!!!!」
お兄ちゃんに向かってその言葉は何ですかあなた!!!!!
…
まぁ、いつものことだけど。
俺があんまりしつこいと呼び捨てしてくるし、言葉遣いも荒くなる。
でも、そんな伊織も可愛くて好き。
本気では怒ってないこともわかるからなおさら。
はぁ。もうずっと朝がいい←
「もう一回だけ『お兄ちゃん』って言ってくれたら起きる〜」
「はぁ…。お兄ちゃん」
「うん、もう一回だけ…」
「お母さあん!!お兄ちゃん起きないよお!!!」
「やめて今起きた今起きた今起きた」
母さん出されたら起きるしかない。うん。
お母さんが起こしに来ても可愛くないしね。うん←