第6章 濡れないように
「あー…」
昇降口を少し出たところ。
私と駆は二人揃って空を見上げ、二人揃ってため息をつく。
「雨だぁ」
「雨だね」
「天気予報大ハズレだぁ」
「降るって言ってなかったね」
傘持ってない…どうしようかな。
この調子だと駆もきっと持ってないよね。
「誰か置き傘してないかなぁ。1日くらい借りても大丈夫だよね?」
「こら。何考えてるの伊織。やめなさい」
傘立てに歩き出そうとする私の腕を、駆は静かに掴んで止める。
「なんでそんなに不機嫌そうな顔してるの」
伊織が変なこと言うからでしょ。と、子供に言うみたいに言われる。
同級生なのにな。
「だって駆も持ってないでしょ?傘」
「…」
駆は無言で私をじっと見る。
やっぱり無いんだと確信して、私はまた傘立てに向かって歩き出す。
と、今度はトントンと背中を叩かれた。
今度は何?!という思いから、少し乱暴に振り向くと…