第3章 そうゆう事
「先輩は、その…私と…あの、…したいと、思いますか?!」
「はっ?!?!」
うわ、初めて先輩のこんな大声聞いた。
レアだぁ…
じゃなくて!!
「ど、どうなんでしょうか…恋人って、そういう事がしたいと思うからなるものだと、前に本で読んだことがあって…」
先輩は、私を眼鏡越しに真ん丸な目で見つめている。
いつも落ち着いているような先輩でも、とても驚いたらしい。
まぁ、当然か。
「そ、それは…、付き合うと言うとは、人によって理由も違うと思うし、伊織が本で読んだことが絶対だとは限らないだろう…?」
うつむきつつ、先輩がそう言う。
「あ…、そうですよね…!すいません!なんか変なこと言ったみたいで…!」
なんだろう。
変なの。
私、なんで少しショック受けてるんだろう。
「え、あ、ちが…っ!」
気づけば、涙で視界がぼやける。
ぼやけた世界で、動揺した先輩の声。
「困らせちゃいましたね、すいません…すいません…さっき言ったことは忘れてください」
ごしごしと目をこすり、涙声になるのを抑えながら言うのに精一杯だった。
「…いや、忘れない。」
「え?」
「今なんて言いましたか?」
そう問おうとした口は、開いただけで言葉を発せることはできなかった。
目を見開いた先には、先輩の顔が驚くほど近くにあった。