第1章 消えない過去、消せない過去
「んっ……あぁっ、はぁっ…」
薄暗く狭い、むさ苦しい、お互いの匂いが混じった部屋の中。
私に跨り野郎の機嫌を損ねないように、自分でも嘔吐が出る程甘い声を放つ。
それに興奮する野郎は、荒ぶる手付きで自らのベルトを外し、自身を取り出しては私の陰部へとあてがう。
―――気持ち悪い。
男というのは馬鹿な生き物だ。
激しくすれば女は皆快感を得られると思っている輩が多すぎる。
結局自分の快楽の事しか考えていない。
この行為に愛は無い。
大した技術も無く、私の気持ちが高揚する訳もなく、勿論下の部分から蜜が溢れ出す事など無く、それでも野郎はお構い無しに私に自身を貫こうとする。
―――痛い。
こんなの慣れているはずなのに、感情等遠の前に捨てたはずなのに。
気付けば私の目から涙が零れていた。
「ハァハァ…いいねぇ…泣き顔なんて唆るなぁ、姉ちゃんよぉ…」
私の目から零れる何の理由も無い涙に野郎は更に興奮し、ただひたすら律動が繰り返される。
相変わらず甘い声を出し続ける私、勘違いする野郎は気分が良いのか腰の動きは早さを増した。
―――気持ち悪い。
そして次の瞬間、野郎は私の唇へ自分の唇で覆おうとした。
その時、私の中の何かが壊れた。
「………ろ。」
「なに?…ハァッ…聞こえねぇよ?」
「やめろと言っている、聞こえないのか。」
突然聞こえる私の低い声に驚きながらも、所詮は女、痛みを加えればまた言う事を聞くだろうと思ったのか、見れば私を殴ろうと野郎の腕が降りかかろうとしていた。
「なっ、何だお前!売られた身で偉そうな口叩いてんじゃねぇぞクソアマ!!」
私は勢い良く振り下ろされる野郎の手を掴み、それを見た野郎は焦っていたがずっと強気を装っていた。
「お前みたいな女の相手してやってるだけ有難いと思え!!」
「頼んだ覚えは無い、勘違いも甚だしい。」
「なっ!!何を!?!?」
私の言葉で怒りの頂点に達した奴は、もう片方の腕を振り上げ拳を作りそれを私に向けて振り下ろそうとした。