第2章 昔話を聞くのは疲れること
<日本のターン>
私が生まれたばかりの頃でしたか。
ある桜の木を見上げている彼女に近こうとしていた時に…
「そこにいるのはわかっていますよ。」
そう言うとこちらを見て、こっちにおいでと呼ばれました。
彼女の横に行くとしゃがみ込んで私を見て、
「貴方が日本ね。私は、天界から来た天照大御神です。」
笑顔でそう言う彼女は、すべてが見えているように見えました。
「私は日本と言います。お初にお目にかかれて光栄です。天照大御神さん。」
「貴方はいい子ですね。そんな貴方にお願いがあります。私にここでの名前をくれませんか?」
少し驚いた私を見て、彼女は立ち上がり
「無理ですよね。急に言われても…。ましてや、さっき会ったばかりの人…」
黙ってしまった彼女を見て、少し考えていた私は、思い出したように
「さくら…」
「え?」
「桜は、どうですか?あ、貴女のような方に合うと思います…」
驚いた顔をしている彼女は、少し上を向いて
「桜か…」
「駄目ですか?」
恥ずかしくしていた私を見て彼女は
「ありがとう。いい名前をくれて。」
彼女を見ると先ほどの笑顔で私を見ていました。
「これからよろしくお願いしますね、日本。」
「こちらこそよろしくお願いします。桜、さん…」
これで昔話は、終わりです。