第3章 はみだし者のバラッド (R18:田中龍之介)
空はどうして青いのだろう。
ああ、青い。
果てしなく。
見渡せばそれは限りなく続いていて、その終わりは地平線の向こうで霞みがかって消えていた。
頭上には雲。
それはもくもくと、なんだか美味そうな形になって浮かんでいる。なんだっけあれ。ああ、そうだ。
「チョココロネ」
ぎゅる、と腹の虫が鳴く。
珍しく詩的な気分に浸っていたのに、やはり空腹には敵わないらしい。まさに花より団子。食べざかりの男子高校生なんて大体そんなもんである。
飯、食いてえなあ。
そんなひとり言を心中で呟いたが、しかし、俺はご飯に有り付くことができない。
何故かって?
「……なんで鍵閉めちゃうんだよォ、用務員のおっちゃーーーん!」
閉じこめられたのだ。
いや、閉め出されたと言ったほうが正しいかもしれない。ともかくである。俺は危機的状況に置かれている。
うたた寝なんかしなきゃよかった、と後悔するが時既に遅すぎた。絶賛テスト期間中の我が烏野高校。生徒はひとり残らず下校してしまったし、もちろん部活もない。
頼みの綱である用務員のおっちゃんも、とっくに帰宅してしまったようだ。
しかも、である。
今日は金曜日なのだ。これはまずい。非常にまずい。俺は下手したら月曜日の朝までここにひとりぼっちだ。餓死してしまう。
「オーゴッド! 我を助けたまえ!」
「ねえ、さっきからうるさいんだけど」
俺が神に助けを乞うのと、どこからともなく女子の声が聞こえたのは、たぶん、ほとんど同時だった。