第15章 禁忌(R18:岩泉一)
結局、下の名前では呼んでもらえないまま。
私は先生のお家でシャワーを浴びて、そのままベッドで一緒に眠って、それから同じ朝を迎えた。
今日は日曜日。
外は、雨降りだ。
何をして過ごそうかな。
ドライブとか?
んん、在り来たりかな。
じゃあ映画?
うーんこれも有りがち。
体育祭翌日でも先生はバレー部の練習があるとかで、ついさっき出ていってしまったけれど、今日は午前練だけで終わりらしいのだ。
彼が帰ってくるまで、約六時間。
せっかくだから手料理でも作って待ってようかな。お買物ついでにもっと可愛い下着を買うのもいいかも。
どれも捨てがたい。
悩む時間さえ、愛おしい。
恋って、くすぐったいなあ。
そんなことを考えていたときだ。
閉まっているはずの玄関先でバタバタと音がして、何事かと思ったら「忘れモンした!」と言いながら先生が転がりこんできた。
「どしたの? スマホ?」
「いや、それは持った」
「じゃあお財布? あ、定期」
「全部持ってるって、違くて」
ちょいちょい、とそんな風に指先だけで私を呼ぶ先生。
髪を軽く手櫛で整えながら近づくと、突然、彼の逞しい腕に抱きよせられた。
驚いて瞬かせるマスカラ。
ぱちくり、目を丸くする。
「?」
「行ってきますの、チュー」
「ちゅう!? 先生が!?」
「愛してんぞ、絢香」
「?!!」
ちゅっと可愛らしいキスが運んだのは、はじめての。
禁忌【了】