第10章 食事会での迷い
次の日、すっかり陽が高くなった頃に、ハイリアはようやく目覚めた。
昨夜は、豪華な部屋に浮かれて、三人で大騒ぎしてしまった。
アラジンが呼び出したジンのウーゴくんとも仲良くなり、騒いだり、話したりでなかなか眠れなかったのを覚えている。
ベッドから体を起こすと、窓辺に立つアラジンと、モルジアナの姿が目に入ってきて驚いた。
どうやら一番、寝坊したようだった。
「……おはよう。アラジン、モルジアナ」
少し恥ずかしくなりながら、ハイリアが声をかけると、二人が振り返った。
「おはよう、ハイリアさん! そろそろ、モルさんと起こそうかと思っていたところだったんだ。もうすぐ、おじさんと昼食だから、早く着替えておくれよ! 」
「え!? ごめん、急いで支度する! 」
どうやら昼食を一緒にとることが決まったらしい。慌てて別室へと駆けこんで、着替えをすませた。
部屋に戻ってくると、窓辺に立つモルジアナの浮かない表情が目に入ってきた。
彼女は昨日から元気がない。
昨日、三人で『アリババくん』の情報を捜して、船の運行を調べに行ってみたところ、暗黒大陸行きの船が、現在出航していないことがわかったからだった。
原因は、バルバッド国内の内紛のせいだという。
その影響でシンドリアへも、許可がない限り、船が出航していないことがわかったのだが、こちらはルートを変更すれば行けないことはないので、見通しの立たないモルジアナの足止め状態と比べたら、ずっとマシだった。
バルバッドに来れば、明るい未来が開けると思っていたのに、どうも上手くいかない。世の中そんなに甘く出来てはいないようだ。
肝心の、本物の『アリババくん』の情報はといえば、『怪傑アリババ』の情報が街に溢れかえってしまっているせいで、昨日は全く見つからなかった。
世間を騒がす有名人と同じ名前とあって、捜すのは苦労しそうな雰囲気だ。
「うーん……。モルさんも、ハイリアさんも困ったね。ご飯を食べる時に、昨日のおじさんにでも聞いてみようか」
シンに誘われているレストランへ三人で向かう途中、アラジンが言った。
正体はわからないけれど、全く信用できない感じでもないシンは、もしかしたら、何か良い情報を知っているかもしれない。
少し探ってみてもいいのかもしれないと、ハイリアは考えた。