第8章 バルバッドへ
「こういうね、白い鳥みたいなのがいーっぱい飛んでいるの」
ハイリアは、両手をあわせて羽ばたく鳥をつくり、モルジアナに見せて説明した。
ぱたぱたとルフのマネをした手が空に上がるのを、彼女は興味深く見つめていた。
「蝶みたいですね」
「そうね、似てるかも」
ハイリアがくすりと笑ったとき、突然、草陰の茂みがカサカサと鳴る音が響いた。
音に気づいて、笑い合っていた三人の声がやみ、足が止まった。
とたんに、こちらを見ていたかのように、茂みからの音も止み、ハイリアは警戒を強めた。
この道に今いるのは、ハイリア達だけだ。だからこそ、緊張した。
周囲は道が整えられているとはいえ、ジャングルなのだ。滅多に出ないとは聞いていたけれど、獣が茂みに潜んでいる可能性もある。
もっとたちが悪いのは、野盗だ。
バルバッドは内紛で荒れているらしいから、野盗がジャングルに潜んで、追いはぎ目当てに人を襲っても不思議ではない。
「獣……、でしょうか?」
「どうだろう……」
モルジアナと小声で話した。
獣であれば、襲われなければ問題ない。
気のせいであればいいと思いながら、知らないふりをしておこうと決め、三人が再び歩き始めた時だった。
ガサガサと音を立てて、手前の草陰から勢いよく何かが飛び出してきた。
現れたのは、全裸の局部に葉っぱ一枚という、とんでもない姿をした男だった。
そのあり得ない姿に、三人同時に固まった。
男は、ハイリア達の方を向き、両手を広げて立つと、満面の笑みを浮かべて言った。
「やあ、君たち! 今日はいい天気だね! 」
変態の登場に、ハイリアは大きな叫び声を上げた。